NYには魔力があるらしい。
短期の滞在予定で来てみたものの、「やっぱりまだ帰れない」と帰国の予定を延ばす人が多いそうだ。実際、私の半年のNY生活の中でも「もうちょっと居ようかと思って」そんな言葉をよく聞いた。
そしてその度に「それがNYの魔力だよね」と誰かが言う。
「私もそうやって、何年もここにいるよ」「帰れる時に帰った方がいいよ〜、それですぐ何年も経っちゃうんだから」そんな言葉もちらほら。
一体どうしてなんだろう? 魔力って何?
帰国や帰郷を延ばす具体的な理由はもちろん人それぞれだろうけど、共通する2つの要因がある気がする。
1つ目は「暮らしやすさ」。
人の目を気にせず自由に暮らせる、という独特の居心地の良さは、ハマる人にとってはとても魅力的だ。それに意外な物価の安さもある。思っていたよりも普通に暮らしていけちゃう。これは大きな要因のひとつだろう。
2つ目は「チャンスの量」。
「巨大なコンペティション」な街・NYでは、ここに居るということ自体がチャンスになる。だから居続けようとする。

もちろんその反面、そんなNYだからこその怖さもあるんじゃないかなとも思う。
ここに居ることで、何かをやっている気になってしまうっていうことだ。
実際に“住んでいるだけ”になってしまう人もいるだろうし、そうなってしまうのが怖いから、必死に何かをしようとする人もいる。そういう人にとっては、結果としてこういう状況が「いい刺激」になっているんだろう。
何かに向かって一生懸命になっていることが当たり前で、みんながそうだっていうことを分かっている人たちの中で生活することは、確かにとても「いい刺激」になる。やらなきゃいけないことを面倒くさく思ったり、これからのことを考えて憂鬱になったり、何かが上手くいかなくて落ち込んだりした時に、「みんながそうなんだ」と考えると、負けてられないなーと思うし、心強くもある。
お互いに大切なことを持っているのが当たり前だから、それを尊重できるし、相手のやっていることに敬意を持って接することができる。
何度か、話をしたりメールのやりとりをしている相手から「あなたの全部がうまくいくといいね」と言われたことがある。
私にとってはちょっと新鮮な言葉だった。
それはきっと、自分がちゃんとやっているから言えることなんだろうな。それって実はすごく難しいことだ。
そのかわり、人とのつながりはちょっと希薄だなと思うこともある。東京も含めて「都会」だったらどこでもあると思うけど、この街の場合、それがもうちょっとシビアになった感じだろうか。
みんな自分のやるべき事が大事だから、何よりも優先する。それが当たり前。
「あいつ付き合い悪いよなー」ってこともないかわりに、他人のことに親身になって助けてくれるってことも少ない。
だから1人が苦手な人にとっては、ちょっと厳しい場所なのかも知れない。
友達といつも一緒にいるのが好きで、どんな出来事もシェアするような親密な付き合い方をする友達を求めるには、向いていない街だろうなと思う。
「ここに来れば何か楽しいことがあると思ったんだけど」と言って、予定よりも早く帰国する人っていうのも、実際に何人かいた。
帰国を早める人もいれば延ばす人もいる。
どちらも共通しているのは、想像と現実は違うってことだ。想像していたよりも良くって延ばすか、その逆か。良くも悪くもギャップが大きい、それが「NYの魔力」ってことなのかなあ。