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「旅の指さし会話帳」で活躍するイラストレーター・北島志織さんの野望、それは“画家”になること!
ついに2007年3月下旬からスタートしたニューヨーク生活。アーティストとして、新米ニューヨーカーとして、日々のなかでの発見や感じたこと、活動の様子を綴ります。【毎週月曜日更新予定】

配信 : 情報センター出版局 http://www.4jc.co.jp/
「旅の指さし会話帳」公式サイト http://www.yubisashi.com/
●第67回●ニューヨークの洗礼
海外に住んでいると、思いもよらないところで、うまくいかないことがある。
今回の転校の手続き(62&63回参照)ではそれを特に実感することになった。
言われた書類を提出に行く度に「えーっと、あとはこの書類を用意して…」といった感じで、通った回数じつに10回、1ヶ月半以上の期間をかけてきた手続きにやっと終わりが見えてきたのが先週。「これで書類は揃ったから、入学できるわよ。授業を選んで登録してきてね」と言われ、授業料を払った。そして前の学校に転校の通知を渡しにも行った。やっと終わった!と思ったのもつかの間、何やら不吉な連絡があったのは数日前のことだった。

「とにかく明日の朝イチで来てください」

という連絡をもらって新しい学校に行ってみると、私の提出した書類の一部が見当たらないとのこと。えー。先週渡したじゃん。
学校が始まるのは4日後だし、それまでに揃えないと間に合わない、と言われ、急遽新しい書類を用意することになった。
翌日の金曜日の朝、その書類を届けると、昼過ぎにまた学校から留守電が残っていることに気がついた。何だろう、と不安に思いながら聞いてみると、

「あなたの転校は拒否されました。他の学校を当たってください」
●第67回●ニューヨークの洗礼_b0104589_1525088.jpg
とのメッセージ。えええ?!聞き間違いかな?と何度聞いてみても、やっぱりそう言ってる。もう入学と転校の手続きも終わっているはずなのに、何で??急いでかけ直してみると、もう担当者は帰宅してしまった(まだ昼3時なのに!)とのこと、月曜日の朝になるまで待ってくださいという返事だ。その月曜日に、新しい学校での授業が始まることになっていたんだけど…。
一度転校の手続きをしてしまうと、元の学校には戻れないという話を聞いたことがあったので、急いで前の学校に連絡をしてみた。転校の手続き前なら、最悪元の学校に戻ることが出来るはずだからだ。
すると案の定「転校の手続きはしちゃったわよ。だって新しい学校から『転校が認められたので、手続きをしてください』って手紙も付いていたから。イミグレーションに通知しちゃった後だから、うちの学校にはもう戻れないの。急いで新しい学校と話をして、状況を知らせて」とのこと。
転校のために認められている期間は60日ある。私の状況だと、もうすでに1ヶ月半以上過ぎてしまっているから、あと1週間以内に新しい学校が始まらないと、ビザがダメになっちゃうのだ。どうしよう!!

この週末、NYに来てから一番の不安な日々になった。
週明けの月曜日の朝一番に、転校が今さら拒否された理由を聞いて、なんとかして説得しなければ。何度も確認した書類に不備はないし、どう考えたって、向こうが書類をなくしたせいで間に合わなくなったってことだもんなあ。そして、もし話してもダメなら、学費を返してもらって、1週間以内に別の学校を探して手続きしなきゃいけない。何てこったー。

NYに長く住んでいる人たちは、多かれ少なかれこういった経験をしているからか、とても同情的だ。ここで引いちゃダメだよ、これがNYの洗礼なんだから、と励ましてくれる人がたくさんいた。担当者を敵に回してもいいから、上の人に事情を話したほうがいいよ、と具体的なアドバイスももらった。今まで話にだけ聞いていた転校に関するいろんなトラブル。まさかこんな形で自分が経験することになるなんて。

ビザ・ステータスが不安定な時の不安な気持ちって、なかなか他にはない感じだなあと思う。あえて例えるなら、ひどい金欠で、今月の家賃が払えない、みたいな感覚に近い…かも? 自分の立っている地面がとても頼りなく思えて、他の人がなんだか羨ましく見える。
とにかくこの意地悪な「洗礼」を乗り越えなくちゃなあ、とため息が止まらないのでした。
by webmag-d | 2008-09-16 15:04 | ニューヨークの洗礼